死ぬまで海外ドラマ(死ぬ海)

アメリカ、イギリス、中国と欧州各国のドラマ。

『ウルフ・ホール』[英] (2015)  




『ウルフ・ホール』(AXNミステリー) (Wiki)

内容

波乱に満ちた生涯を送ったヘンリー8世の時代は、その衝撃性から映画やテレビシリーズで何度も映像化されているが、本作は、貧しい生まれながらも商人や法律家としてキャリアを積み、その英知と交渉力でヘンリー8世の側近として才覚を発揮したトマス・クロムウェルの視点から展開するストーリーが魅力。
出演者、制作陣とも類まれな才能が集結し、登場人物の複雑な感情と政治の駆け引きを融合させた知的で荘厳な超大作が誕生した!
(公式)


レビュー

・見たばっかり。
・最初の妻と離婚したいばっかりにカトリックと喧嘩して英国国教会を設立し、そうまでして再婚した次の妻(アン・ブーリン)にも結局飽きて処刑してまた新しい妻に乗り換えてしまった鬼畜王ヘンリー8世(笑)をめぐる、日本で言えば忠臣蔵や幕末もの並みに人気らしい歴史的題材の新たな視点によるドラマ化。
・主人公はそのヘンリー8世の片腕の辣腕政治家で、かの清教徒革命のオリバー・クロムウェルの大伯父にあたるらしい、トマス・クロムウェル
・その一見地味な主人公による、実際地味なドラマ。(笑)
・しかし面白い。
・AXNミステリー公式の「登場人物の複雑な感情と政治の駆け引きを融合させた知的で荘厳な超大作」という煽りは、実際その通りで付け足すべき言葉が特に見つからない。(笑)
・出来事そのものは(少なくともイギリスの視聴者には)"お馴染"のものなので、ある意味では「トマス・クロムウェル」という主人公のパーソナリティが全てというところはある作品かも。
・そういう意味ではイギリスに数多ある、名物刑事や探偵を主人公とした現代もののミステリーと、味わいとしては似たものがあると思います。
・「ヘンリー8世(アン・ブーリン処刑)」と「名刑事ミステリー」という、イギリスドラマの二大定番の融合した作品?
・"歴史"ものだけど、"個人"的な感情移入もし易いというか。
無感情ですけど。(笑)
・まあ、実際には無感情というわけではなくて、実は人並み外れてセンシティブで豊かな感情を持っているのかも知れないトマス・クロムウェルが。
・しかしそれを更に上回る類稀な知性と克己心とある種の美意識でもって、結果淡々と事に対処して行く様を。
・緻密に構成された音楽を鑑賞して行くような感じで見て行く作品?
・構造としては、観客だけがトマス・クロムウェルの「内面」が想像出来るような構造になっているので。
・いったんドラマに入って行くと、かなり密着感があってほんの些細な"揺れ"でも十分に心が揺さぶられる感じになる。
・失脚した元上司"ウルジー枢機卿"に対する追慕の念とか、意外と実は素直なものなんだろうなと、ウルウル来ます。
・ほぼ秘し続ける"恋愛"感情はさすがに分かり難いですけど、やっぱアン・ブーリンのこと好きだったんですかね?

・基本的には、起きる出来事そのものはいちいち派手派手しい大騒ぎなので。
・歴史的にもメジャーだし。
・それとのコントラストで、あるいはそれありきで、成立しているところはあるドラマかも知れません。
・確かに"知的"で地味なんだけど、全体としては"荘厳"でスケール大きくも感じられる、見事な作り。
・事件に比してのトマス・クロムウェルの"抑制"が、むしろ"荘厳"さ、クラス感を生み出しているというか。
・ここらへんをそのまんま"派手"に作ったのが、例えば2007年の『The TUDORS~背徳の王冠~』
・あれは参った。馬鹿な登場人物が馬鹿な騒ぎを起こすだけの話で。(笑)
・アン・ブーリンも全く魅力的に見えなかったし。
・今回のアン・ブーリンは、ヘンリー8世と結びつく過程そのものは余り描かれていないんですけど。
・成り上がってからの、その地位で示す彼女なりの知性や不屈の精神などは、確かに鼻持ちならない傲慢な女ではあってもそれはそれであっぱれでもあって、ヘンリー8世が惹かれるのも分かるかなという感じには見えています。
・余り"性的"魅力が出ているようには見えないんですけど、それは原作小説自体の解釈なんですかね。
『HOMELAND』のダミアン・ルイス演じるヘンリー8世も悪くない。
・まぎれも無い自分勝手なクソ野郎ではあるわけですが(笑)、それはそれなりに"王"という特殊な地位に相応しい威厳に見える瞬間もあるし、そのバイタリティそのものは"オス"の本懐でもあるのかなと、思わなくもない。
・あんまり思いたくはないけど。(笑)
・ダミアン・ルイスの演技は多分、標準的なヘンリー8世像からすると少し線の細い感はあるんだろうと思いますが。
・それはそれとして余裕を持ってコントロールしている感じで、やはりイギリス人俳優でそこはホームなんだなと、"アウェー"の時の『HOMELAND』との比較では感じられて、興味深かったです。
・全体としてはやはり、知的な作品というか"知性"を基調とした作品ではあって。
・王妃となったアンについているジェーン(アンの弟の妻)の、アンとトマス・クロムウェル双方に対する皮肉な物言いの魅力とか、あるいはアンの姉でヘンリーの元愛人メアリーの、トマス(の知性)へ向ける妙にひたむきな思慕とかには、何か作者の贔屓(笑)というか好みのようなものが、感じられます。

・それでも単に地味な、マニアックな作品に終わらせなかったのは大したものだという感じで、AXNミステリーが盛んに世界的大ヒット作品『ダウントン・アビー』と並べて宣伝していたのも、最初は鼻で笑ってましたが(笑)最後は納得しました。
・ここ数年特にアメリカドラマを意識して、「定番的」「地味」という定評を覆そうと格闘していた感じのイギリスドラマ界が、(アビーに続いて)何か一つ違う次元に踏み出したかなあと、そう感じさせる作品にはなっていると思います。
・単なる"アメリカ"化、"ポップ"化ではなくてね。
・"ゴージャス"化自体は、相変わらず競ってる感じはしますが。
田舎臭いイギリスドラマも無くさないでね。(笑)
『SHERLOCK (シャーロック)』的な"スタイリッシュ"路線は全く趣味じゃないなあ、僕は。アメリカに任せとけという感じ。
・まあ『アビー』とはまた支持層は違う感じはしますけどね。"メロドラマ"ではないので。
・どちらかというとやはり、最初に言ったように"渋めの刑事もの"のファンの方に薦めたいというか。
・僕は両方見ますけど。(笑)
・アビーも好き。
・まあ作り手の"知性"と"凄腕"という点が、共通点というか。

・で、結局"ウルフ・ホール"って何なんですかね。
・宮殿の建物の名前?正式名称?通称?
・そこはちょっと分からなかったです。
・「狼の巣」という感じで、権謀渦巻く宮廷の様子の謂いだという"裏"の意味は推測出来るんですけど、"表"が分からない。(笑)
・まあいいですけど。
・唯一不満としては、終わり方ですかね。
・アンの処刑で終わってるんですが、内容的にはやはり、トマス・クロムウェル自身の"最期"(または最後)で終わるべきかなあと。
・原作はどうなんでしょう。
・今回AXNミステリーはオリジナル全6話を4話に縮めて放送していますが、まさかラストを変えるとは思えないし。


他の人の感想

『英国歴史ドラマ ウルフ・ホールが面白い』(Can of Good Goodies さん)

さすがにまだ記事がなかなか見当たりません。
上の方は「北米でもかなり注目をあびていた」とおっしゃっていますが、カナダ在住の方のようなのでUSAの方の評判はどうなのかなと。"北米"と言っても、カナダとUSAは、結構違いますからね。
「歴史好きじゃないのに(人間ドラマとして)のめりこめる」「人物描写が類型的じゃないので面白い」というのは、おっしゃる通りだと思います。
"類型"外しはたいてい"カジュアル"化に繋がってるわけですけど、この作品の場合はむしろ"品格"が上がってるのが特徴かなと。

[追記]
上のコメント欄で、

「とにかく、クロムウェルの描き方が現代的すぎると思うので。まるで私たち現代人がタイムスリップしたような人物造形は誤解のもとのように感じますね。」

というコメントがありました。
なるほど、僕の「現代の名刑事ものとの親近性」という感想と、肯定否定は逆ですが重なるものがありそうですね。
ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』と似た"タイムスリップ"感というのを、書こうとかとも思ってたんですけど言うほど"似て"はいないと思ったので、やめたんですよね実は(笑)。やはり、そういう部分はあるのか。


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Posted on 2016/01/13 Wed. 13:33 [edit]

category: 2015-2019年のドラマ(イギリス)

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『宿命の系譜 さまよえる魂』(2016)[英]  

宿命の系譜 さまよえる魂.jpg


『宿命の系譜 さまよえる魂』 (AXNミステリー) (allcinema)

内容

ドラマ「魔術師マーリン」のコリン・モーガン主演作。
時は1894年、英国。ネイサン・アップルビーは新進気鋭の精神分析医だったが、母が所有する農園を引き継ぐため、実家に戻ることになった。彼は、幼い息子を亡くし失意のどん底に落とされた過去を持つが、先進的でアクティブな美しい妻シャーロットと近代的な農場経営を目指し、過去から逃れ、新しい生活に希望を見出していた。そんな矢先、村の牧師から、不可解な言動をする娘ハリエットを診てほしいと依頼される。それをきっかけに、ネイサンの周りで不可思議な出来事が次々と起こる。その背後には、アップルビー一族に纏わる、恐るべき宿命が隠されていた・・・ (公式)


感想

・色々と惜しい感じの作品。"傑作"となる要素は随所にあるんですが。
・基本ホラーは興味無いので、ダルいなあと思いながら見始めたんですが、主人公が"精神分析医"ということもあって1,2話あたり(全6話)は「心霊」とも「心理」ともどちらとも取れるような"解決"の仕方をされていて、興味が保てました。
・回を追うごとに段々「心霊」に傾いては来るんですが、その頃には主人公の"事情"も散りばめられた"ミステリー"もいい感じに組み込まれた状態になっていて、若干不本意ではあるけれどまあ許せる範囲かなという感じ。
・終盤「現代」にいきなり話が飛ぶのも、辻褄としては必要なのは分かる、ただ許せないのは・・・
・好評を承けて無理やりくっ付けられたと思しき、ラストでの"クリフハンガー"ですね。それやっちゃいかんだろ。
・どう見ても一つのストーリーとして終わっていて、だから"ホラー"というよりも登場人物たちの"物語"として見ることが出来たのに、台無しじゃないか。
・それくらいなら、最初から『精神分析探偵ネイサン・アップルビー』とかにすればいいんだよ(笑)、下らねえ。
・がっかりですね。やたら元気な奥さんとか、面白かったのに。村人たちとの関わりとかも。
・技量のあるスタッフによる、しかし結果"失敗作"という感じの作品。何か方向性の絞り方によっては、もっと面白くなりそうなんだけどなあという。嫌いではないんですけど。
・...ちなみに美しくもおどろおどろしい、印象的なOPテーマは、元はイギリスのトラッド・ソングで、僕はPentangleというバンドの"69年のバージョンが好きなので、毎回結構ドキドキしてました。


Posted on 2017/02/16 Thu. 20:01 [edit]

category: 2015-2019年のドラマ(イギリス)

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『キャピタル欲望の街』(2015)[英]  

capital.jpg


『キャピタル 欲望の街』(AXNミステリー) (allcinema)

内容
ロンドンのピープス通りに暮らす住人全員に匿名のハガキが届く。そこには、「あなたのものが欲しい」と記されていた。この謎のハガキにより、ピープス通りの人々の秘密や心の闇が徐々に明かされていく・・・BBC「ブロードチャーチ」スタッフによる異色作!(公式)

感想

・全四話。
・前半二話は結構わくわくしたんですけど、後半二話であれれというか尻すぼみというか。
まさかのハッピーエンド!前半あれだけえぐっといて暴いといてほんとまさか。ある意味では凄いと思いますが。
・でも拍子抜けかなあ、やっぱり。特に"銀行家夫婦の和解"には、ずっこけました。あの奥さん救われていいの?
・ムスリム一家の"傍若無人お母さん"が「いい人」で終わったのも、嘘だろうという感じ。
・"第一印象最悪"のグイグイ系ナンパ男が、結局その後の「引き」で上手いこと思いを遂げるのも、なんだかなあという感じ。
・そのくせ一番救われて欲しい、"政治亡命"ジンバブエ女性は、強制送還の運命から逃れられなかったようだし。
・こうして見ると、「強い」者にだけ優しい世界観なのかなこの世は甘くないということを言いたいのかなと一応解釈してみたりもしますが、その割には「和解」の大安売りだしよく分からない。
・そもそもの「ハガキ」の送り手も、結局分からなかったんですよね?
・"続編"があるということか。
・その「ハガキ」騒動の対応に追われて住民に辛く当たられていた警部補は、いい味を出していたと思います。実際四方八方の評判を気にしなくてはならない、今時の役人や警察は大変だろうなと思いますし。(笑)
・ムスリム一家のお嫁さんも好きかな。モンスター姑への、諦めたような対応がリアル。(笑)


Posted on 2017/02/17 Fri. 17:58 [edit]

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"実話"ものの難しさ ~『グラスゴーの連続殺人鬼』[英](2016)  


ここのところずーっと、余り思い入れの無い作品については製作年代の近い他の作品とセットで書いて来ましたが、段々むしろその"セット"を探すことの方が厄介になって来たので、もう粗製乱造を恐れず
見た先から単品で書いてしまうことにします。(笑)


グラスゴーの連続殺人鬼


『グラスゴーの連続殺人鬼』(AXNミステリー) (allcinema)

内容

スコットランド南部で8人を殺害した実在の事件を描く衝撃作!
1956年〜1958年のわずか2年の間に、スコットランド南部で8人を殺害したとされるピーター・マニュエル。実際にはさらに多くの犠牲者がいると推測され、彼の残忍で凶悪な犯行は、世界の報道関係者の注目を集めた。逮捕後、一転して無罪を主張し続けたマニュエルは、裁判で自ら弁護人を買って出るが、1958年に死刑となる。(公式より)


感想

・"実話"ものは難しいんですよね。
・劇中の一つ一つの現象について、普通ならその"意味"をめぐって「作者」と対話しながらこちらの見る行為は形成されて行くわけですけど。
・"実話"の場合は単に「事実」であって「作者」もくそもないというところがあるので、何が起きてもああそうですかと流して見てしまう。
・勿論"創作"の部分もそれぞれにあるんでしょうけど、そんなことこっちには分からないですからね。
・究極にはその「事実」の「作者」としての"神"と対話することは不可能ではないわけですけど(笑)、そこまでのことには普通はならない。(笑)
・要は「意味」を取りにくい、それによって感情移入のアングルを見つけ難いと、そういうことですが。

・この作品もその例に漏れないと思います。
・特に苦労している感じが窺えたのは、"連続殺人鬼"ピーター・マニュエルの描き方で。
・たいていのシリアル・キラー物は、そのシリアル・キラーの独特のパーソナリティや知能犯ぶりなどを"劇"的に描くことで、ある意味で観客を魅了する、作品に興味を抱かせるのが常道なわけですが。
・実在の犯人だと、増してそこまで有名でない人だと、なかなかそうもいかない。
・美化する/カッコ良く描くのは"実在の"被害者の手前やり難いでしょうし、"独自解釈"を加えるにしても元が知られていなければ何のこっちゃという話ですし。
・このピーター・マニュエルも一応知能犯の部類ではあるんですが、せいぜいがずる賢いというレベルで魅惑されるほどではないですし、ただただ気持ちが悪い、早く消えてくれないかなと、およそ"感情移入"とは無縁の態度で見ることになってしまいました。
・そのマニュエルを追う刑事役の人が『シェトランド』の人(ダグラス・ヘンシュオール)で、この人は結構好きなので、その再会は嬉しかったですが。
・まあなんかこちらも普通のおっさん刑事でしたけどね(笑)。"実物"(マンシー刑事)に似せたらしいんですが、そう言われても元を知らない側からするとそれも・・・という。
・そもそも日本人に見せるのが間違いなのかもしれませんが、それだけでもない気がする、どうも色々なことを気にした挙句に手堅いだけで特徴のよく分からない作品になってしまった、そういう印象をどうしても受けます。
・事件は実話でもドラマとしては"作者"がいるわけで、やはりドラマを見る時はその作者の具体的な"感情"のありようを、なるべく感じてこちらも反応したいもの。
「"あの"事件の本当のところはどうだったのか」という、そういう興味の持ち方以外可能な作品なのかなあ、これ。
・身近にイギリス人の方がいたら、聞いてみて下さい。(笑)

・割りと好きだったのは、事件解決に奮闘するマンシーを、助手的に支える婦人警官/女性刑事との間で生まれる「同志」的な感情かな。
・結構地位の違いを越えて、気安い感じ。(笑)
・"男女平等"というより"異性ゆえの気安さ"という感じで、割りとイギリスの刑事ものではよく見かける風景な気がします。
・いざという時すっごい"懐"に入って来ますよね、イギリスの女の人って。
・アメリカの"張り合う"感じとはまた違う。
・そういえば『シェトランド』でのペレス警部と"トッシュ"との関係も、そういうところがありました。
・ああいうの好きですね僕。
・上下関係があるのが、むしろ味という。
・学校や部活の"後輩"とかに近いのかも知れない。「先輩」として立てながら、結構厳しいことを言う女の後輩。(笑)
・そんなところです。
・全3話。


Posted on 2017/07/25 Tue. 12:33 [edit]

category: 2015-2019年のドラマ(イギリス)

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"タイトル"の意味 ~『ニュー・ブラッド 新米捜査官の事件ファイル』(2016)[英]  




『ニュー・ブラッド 新米捜査官の事件ファイル』(AXNミステリー) (allcinema)

内容

主人公となるのは、新米刑事ラッシュと新米捜査官ステファンの若き2人。
2人はそれぞれ別の観点から、ロンドンで起きた中学教師の転落死を追うことからストーリーは始まっていく。(中略)
ラッシュはイラン出身の両親から生まれた英国育ち、ステファンはポーランド出身で、いわゆる英国第1世代である彼らだが、アウトサイダーとして見られることも多い。その隙間から生まれる矛盾や、英国社会が抱える社会問題、人間模様がストーリーに織り込まれ、ホロヴィッツらしい単なるミステリーにとどまらない展開が魅力。(公式より)


感想

・まず言っておきたいのは、邦題(の副題)への文句です。
・というかそれが多分最大の、この作品に対する"批評"になるのではないかと思いますが。(笑)
・「ニュー・ブラッド」「新しい血」ということで、"新米"捜査官ということを前面に出して上の作品紹介文もそれに従っているわけですが。
・この"ブラッド"が意味する最大のところは、むしろ後半の部分、「イラン」「ポーランド」の""、それが移民("英国第1世代")として現代イギリス社会の新しい血としてどのように機能しているのか、暮らしているのか、それを表現するのが何よりもこの作品の目的だろうと思います。
・ていうか、そうに決まってると思いますけど(笑)。「新米」かどうかなんて、どうだっていい。
・だいたい見ている限り、ステファンはSFO(重大不正捜査局)の"下っ端"ではあっても"新米"というわけではないようですし、ラッシュも「刑事」としては試用期間ではあっても警官としてのキャリアはそれなりで、その試用期間も何回目かのある意味"ベテラン"ですし(笑)、捜査能力的にもおよそ"新米"のレベルではない。
・そして駄目押しして言うと、「新米捜査官の事件ファイル」なんて副題に、どんな"引き"力(りょく)があるのかという。全然見たくならないぞと。(笑)
「移民」の方の「血」を匂わせてくれれば、社会勉強がてら見てみるかという気にもなると思いますが。
・そういう意味で"副題"として失格だと思いますし、内容的にも不正確だと思いますし、全くいただけないと僕は思います。反省して欲しいです。(笑)

・ドラマとしては、"移民の悩み"的なものはごく時々出て来るだけで、意外と軽い作り。
・二人のタイプの違うイケメン捜査官が、脱法捜査も何のその(笑)、仲良く喧嘩しながらなんだかんだと綱渡りしながら巨悪の摘発に成功する、その繰り返し。
・ちょっと法律的に怪しい部分が多過ぎる気もしますし、下手するとあぶない刑事風というか。(笑)
・お気楽なステファンとキレ過ぎるくらいキレる基本的には優等生のラッシュは、性格の違いで対立したりはしますが、ただ互いの"バックボーン"に言及する場面はあったかななかったかなというくらい。
・ステファンの方はポーランド系コミュニティとも付き合いが深いので、それ絡みのシーンなんかも出て来はしますが。
・本当にこんな感じなのか、あえて強調しなかったのか、あるいは同じことですが"バックボーン"よりもそれぞれが"イギリス"のいち青年として生きている、そのことを正に表現したかったのか。
・多少の拍子抜けというか、不自然感は無いことは無いんですけどね。
・"試用期間"の職場で息を吸うように(笑)日々パワハラを受けているラッシュが、しかしバックボーン絡みの嫌がらせはほとんど全く受けなかったり。
・普通あるだろう、もっと一言二言、さしたる悪意は無くても。
・世論マスコミ向けに特に"気を付けている"というような雰囲気は、全く無かったですけどね。(笑)
・そういえばその妹が、職場で冤罪に巻き込まれた時も、一切そこらへんのネタは出なかったですね。
・ううむ。

・という細かい引っかかりはあるにはあるんですが。
・それはそれとして、「移民たち/"ニューブラッド"と共にあるイギリス」を幾分理想寄りに描き出そうとした製作者たちの意図・思い自体は、僕には爽やかなものに感じられました。
・こうであったらいいですねというか。現状、ないしは近未来が。
・まあまあ届かないことは無いかなくらいの、「理想」
・ちなみにステファンの"SFO"というのは、ほんとにあるんですね。(Wiki)
・重大な不正について捜査するけれど警察ではないという、不思議な位置づけ。"手帳"も無いし。
・いや、真面目な話、何か手帳的なものが無いと、いちいち身分の証明が面倒で仕方ないように見えましたが。(笑)
・ラッシュの方の、刑事の「試用期間」というのも、初めて見る描写でした。
・単に試験に通ってまたは手柄を立てて、昇進して"配属"されるんではないのか。
・最近出来た制度だとか?
・まあ結構面白かったです。シーズン2もあるような終わり方ではありましたが、人気出るのかなあ、これ、少し微妙な感じがしました。(笑)
・"軽妙"過ぎるものって、意外とスベるんですよね(笑)、逆に「通好み」になっちゃう。
・やったら多分、見ると思いますけど。


Posted on 2017/08/16 Wed. 17:42 [edit]

category: 2015-2019年のドラマ(イギリス)

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"実話"ものの難しさ2 ~『リリントン・プレイス エヴァンス事件』(2016)[英]  




『リリントン・プレイス エヴァンス事件』(AXNミステリー) (allcinema)

内容

1943年~1953年の間に8人以上を殺害したジョン・レジナルド・クリスティが犯した実在の事件を映像化。本編中で描かれる「エヴァンス事件」は、英国犯罪史に残る凶悪事件で、冤罪事件として物議をかもし、1965年の英国における死刑制度廃止に大きな影響を与えた。
1950年、ティモシー・エヴァンスは、妻ベリルと娘ジェラルディンを殺害した罪で絞首刑となる。一度は自ら罪を認めた犯行であったが、その後エヴァンスは「無罪」を主張。しかし、二転三転するエヴァンスの主張は認められず刑は執行され、その背景に隠されていた恐ろしい真実は数年後に明らかになる…。(公式より)


感想
・全三話。
・うーん、よく分かんない作品でした。
・何が言いたかったんでしょう。
・この前も言ったように実話ものは難しくて。
・フィクションならばまず"言いたいこと"があって、それを表現する為に"事件""出来事"を設定・構成するわけですけど。
・実話ものの場合「出来事」は既にあるわけです。
・そしてそれは基本的にはただあるのであって、何か"言いた"がっているわけではない。(笑)
・それは作る側で改めて設定しないといけないわけですが、作り事でも難しいのに、事実と相談しながら"言いたいこと"の説明に出来事を使役するのは、かなり難しい、少なくともフィクションほど効率は良くない
・勝手にドラマチックなor納得的なオチをつけるわけにもなかなかいかないですし、終わってみて「だから何?」みたいな気分になる確率がかなり高い。
・犯罪物の場合、"言いたがっている"とすればそれは犯人なんですけど、しかしそもそもたかだか犯罪の犯人の言い分などに、そんなにいつもいつも聞くに足る内容があるとは思えない。
・それが"歴史的"人物などの場合は、その人がやったこと自体に意義、つまりは「公共」性があるので、こちらとしても興味は持ち易い。
・これら二つの中間にあるのが、「切り裂きジャック」を筆頭とする、超有名な犯罪でしょうか。
・それを想起する時に、同時に"時代"を"歴史"を、想起せざるを得ないような。
・勿論全ての人間に"ドラマ"はあるので、例えば「小説」のような形でじっくり掘り下げてからなら、その"ドラマ"化にもそれなりのスムーズさ、メッセージ性を持たすことは可能だと思いますが。
・オリジナル脚本では、なかなかそこまでのものは難しいと思います。
・所詮ドラマなんて、その脚本なんて、本質的には事実のパッチワークですから。
・何かを「単純化」するところに、その技術の本体があるというか。
・「原作」があるものと無いものの違いは、ドラマを見慣れた人ならものの数分で分かりますよね。(笑)
・やっぱり全然、単位時間当たりの情報量が違う。

・このドラマは「事件」の内容的には、前回の『グラスゴーの連続殺人鬼』よりは興味深そうに見えたので。
・むしろドキュメンタリー的に、もっと客観的に作れば、結構見られるものになったのではないかなと感じます。
・...ていうか身も蓋も無いことを言えば、"実話"はドラマにするよりも、ドキュメンタリーにした方が面白くするのは全然簡単だと思います。NHKに任せておけばいいというか。(笑)
・逆に「ドキュメンタリー」の中で、視聴者サービスのつもりなんでしょうけど、時々挿入される「ドラマ」シーンの間抜けなことダルいこと。
・あれがつまり、「実話のドラマ化」だと言ってしまうと、余りに無慈悲かも知れませんが。(笑)
・このドラマを実際に導いているモチベーションは何かというと・・・犯人役ティム・ロス
ティム・ロス
の演技ですかね。ある意味ノリノリの。
・ティム・ロス(『ライ・トゥ・ミー』など)自身は、かなり"意義"を見出して、この作品をやっていたんだろうなというのは伝わって来ます。
"常軌を逸した"連続殺人鬼の人物像を、俺の演技で表現してみせると。
・成功・・・していたんですかね?よく分かりません。
・これもまた同じことですが"実話"ものの難しいところで、「言いたいこと」が分からなければ表現"出来て"いたのかどうかもよく分からないですし、なまじ実物がいるので"的確"なのか"似ているのか"という、一般視聴者にはおよそ判断不能な問題もどうしても残るわけですし。
「なんか嫌な奴だな」というのは、伝わって来た気がしますが。(笑)
「大した理由も無く、自分のささやかなプライドの為に殺したらしいな」と。
・それで・・・いいんですかね?(笑)
・分かりません。
・演技自体も、"熱演"ではあるんですけど、ちょっとクドいかな。"溺れている"感じがするというか。
・元々クドさが持ち味なのは、『ライ・トゥ・ミー』でもよく分かるわけですけど。
・設定や脚本の支えが不十分な状態であれをやると、かなり鼻につくというか、自己愛丸出しで間抜けに見えるというか。
田村正和を越えて木村拓哉の域に近付いてしまっているというか。(笑)
やめましょう。(笑)

・というわけで、ドラマとして破綻しているわけでも特にチープなわけでもないですけど、余り伝わって来るものの無い作品だったかなと。
・製作者が犯人をどう思っているかすら、結局はよく分かりませんでした。
・特に「なぜ赤ん坊を殺したことだけは否定した」のかは、せっかくドラマなんだから追求してみれば良かったのではないかと。
・「分からないから分かりません」では、じゃあ何で作ったんだという話に感じます。
・残念でした。"そういう事件があった"ということしか、見て分かることがなかったというか。
・"冤罪事件"であることすら、特に追求されているわけでもないし。
・どうしたかったの?という。


Posted on 2017/08/22 Tue. 20:44 [edit]

category: 2015-2019年のドラマ(イギリス)

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この怒りをどこにぶつけたらいいのか ~『エクソシスト』S1(2016)[英]  

しょうがないのでここにぶつけます。他に無いし。(笑)





『エクソシスト』S1 (スターチャンネル) (allcinema)

内容

1973年にウィリアム・フリードキン監督によって作られたホラー映画の金字塔『エクソシスト』。公開されるや、“エクソシズム(悪魔祓い)"をテーマとした戦慄の内容が世界に衝撃を与え、世界中で大ヒット。アカデミー賞ではホラー映画としては異例の作品賞、監督賞を含む全10部門にノミネートされ、その後3作の続編が製作された。そして現在も“エクソシズム"をテーマにした作品や、手法を模倣した作品が作られるなど、ホラー映画の金字塔として映画史に燦然と輝くあの名作がTVシリーズとなって蘇える!(公式より)


感想

・全10話。
・まず最初に言っておくと、僕はホラー映画のファンでは全くありません。
・ただ今回問題(?)となる1973年のウィリアム・フリードキン版の『エクソシスト』



は例外的に大好きで、怖いとか怖くないとかははっきり言ってどうでもいいんですけど(それが僕のホラー映画に対する基本的な態度)、その当時も"ホラー映画の枠に収まらない"と評価をされた映像美と、更に言えばクレジットを見なければとてもアメリカ映画とは思えなかったヨーロッパ的イギリス的な文体で、ある意味"謎"の映画でした。
・その後ウィリアム・フリードキンの映画は何本か見ましたが、多少の共通性は感じつつもやはり"アメリカ"映画には違いなかったので、『エクソシスト』に関しては原作小説の力が大きかったんだろうなあと、そういう風に了解していましたが。
・原作自体も実はアメリカ作品なので、その時点で多分、"ヨーロッパ"が特異に仕込まれていたんだろうと思いますが。
・その構造が、そのまま映画に反映されたというか。

・その"イギリス的アメリカ映画"『エクソシスト』が"イギリス"製作ドラマになったということで、どういう感じになるんだろう、それにしても今更だなと若干引いた感じで見始めたこのドラマでしたが。
・結果は予想外に期待通りというか、設定に大幅な改変を加えつつも、フリードキン『エクソシスト』の味わいが見事に再現されていて、喜んだというか驚いたというか。
・"イギリス""アメリカ"というなら、何ならこっちの方が「アメリカ」な気はしましたけど。
・"憑かれる"女の子は大幅にエロく美少女に(笑)

casey_exorcistHannah Kasulka

なってますし。
・"ケイシー"役のHannah Kasulkaさん。なかなかいい演技だったと思います。
・自分がどのように魅力的に映っているかを意識しつつ、それを思い切り良く叩き壊している感じが。(でも美しい)
・話戻してにも関わらず、オリジナルの持っていた他のホラー映画とは一線を画する"品格"のようなものは全く損なわれていなくて、『エクソシスト』世界の強靭さ、ないしは製作者のオリジナル『エクソシスト』に対する愛を感じて、"絶賛"の準備を僕はしていたわけです。
8話くらいまではね。ぎりぎり。
・ところが。

・そこで何が起こったか。
・一応ネタバレを避ける為にボカしてはみますが、簡単に言うと悪戦苦闘の末少女から悪霊を祓った、「その後」が描かれているわけです。
・それ自体もまあ、僕には不要でしたが、それまでもかなりオリジナルな展開はしていましたからありとしましょう、ただその表現の仕方が酷い。
・それまで心理攻撃や時々のポルターガイストで、ある種"節度"を守ってエクソシストたちと戦いを繰り広げていた悪霊・悪魔が。
・いきなり物理攻撃であっさり重要人物を殺すわ、ジャジャーンとばかりにサイコキネシス(念動力)を盛大に発動させて人間たちを抑え込むは、もう何か別のカテゴリーの作品に。
・家族の脅し方もひねりも何もなくて、どこにでもいる猟奇犯罪者か立てこもり犯かという、脅し方拷問の仕方。
・どうしたどうした?脚本家どこかでIQが50下がる薬でも飲んだ?という感じで、ポカーンというか呆れるというか。
・もうね、信じられなかったですよ。
・一応"憑依"じゃなくて"融合"だとかいう説明もあったりはするんですが、その説明の理屈っぽさが既に違う作品というか、厨二病的というか。
・クリスタルはどこで集めたらいいんですか?という、そんな感じに。


・例によって「放送途中で決まったシーズン2の為のオリジナル展開」という、"大人の事情"が推測されるわけではあるんですが。
・それにしてもこんな酷いのは見たことが無いです。"原作レイプ"・・・というだけでなく、"自作レイプ"でしょ、これ。
・台無しです。
・そもそもはこの程度の見識しか持たない製作陣だったのが、偉大な原作の影響下にいる間だけ"傑作"を作れた、なんて悲しいことは思いたくないんですけどね。
クレジットを見る限り現場スタッフに大きな変動は無いので、儲かると見た誰か悪い大人が急に噛んで来たのかなあと、"希望"を込めて推測してみるしかないですが。
・はあ。
・最初に言ったようにホラー映画やホラードラマに大きな期待を抱いているわけではないので、単につまらなかったらつまらないで無視しておけばいいだけなんですけどね。
一回喜ばされてしまっただけに、失望が大きいです、怒りが抑えられないです。(笑)
・更に個人的な事情を言うと、僕が予定変更して今月スターチャンネルの契約を延長したのは、ファーゴシーズン3が見たかったからではなくて、この作品を最後まで見届けたかったからというのが主な理由だったんですよ。
2400円返せという話です。(笑)
・まあ"見届け"なかったら、"誤った"高評価のままレビューしてしまうことになったでしょうから、ブロガー的には無駄ではなかったわけですけどね。
・でも"観客"的には無駄です(笑)。半分返して。(笑)

・というわけでシーズン2は見る気が無いですが、逆に見るべきなのかもという気もしないでもない。
・"豹変""堕落"の本当のところが、そこで改めて確認出来るかも。
・まあ見ないと思いますけどね、そんな不健康な楽しみ方。(笑)
・はあ。
・ちなみに実は、"クリフハンガー"ではないんですよね。
・一応"解決"はしている。
・その解決のさせ方が、また陳腐で気に食わないんですけど。
・以上、ほぼ単なる怒りの発散でした。(笑)
・興味のある方は、確かめてみて下さい。(笑)


Posted on 2017/11/09 Thu. 15:50 [edit]

category: 2015-2019年のドラマ(イギリス)

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